04 / PRICING

Zoho Vaultの料金プラン
自社に必要な機能はどのプランに入っているのか

Zoho Vaultには無料プランと3つの有料プランがあります。価格差だけを見て決めると「必要な機能が入っていなかった」という失敗につながります。このページでは、各プランの位置づけと機能差、費用の試算、契約時に見落としやすい注意点を整理します。

料金情報についての重要なお断り

本ページに記載する価格は、2026年8月時点で公開されていた情報にもとづく参考値です。価格・プラン構成・各プランに含まれる機能は変更されることがあり、また為替、契約形態(年間/月間)、税の取り扱い、キャンペーン、代理店経由の契約などによって実際の金額は異なります。導入検討にあたっては、必ずZoho Vault公式の料金ページで最新の情報をご確認ください。

1. 4つのプランの全体像

Zoho Vaultは、個人利用向けの無料プランと、組織で使うための3つの有料プランで構成されています。有料プランは上位になるほど、統制・連携・監査の機能が充実していきます。

プラン 参考価格
(1ユーザーあたり/月・年間契約時)
位置づけ
無料
(Free)
0円 個人利用向け。パスワードの保管、自動入力、パスワード生成といった基本機能を無期限で利用できます。組織としての共有・統制機能は含まれません。
スタンダード
(Standard)
約108円 チームでの共有を始めるための入門プラン。ユーザー・グループへのパスワード共有と基本的な管理機能が使えます。小規模チーム向け。
プロフェッショナル
(Professional)
約540円
※最低5ユーザーから
企業導入の中心となるプラン。詳細な権限管理、パスワードポリシー、監査レポート、漏えい検知、緊急アクセスなど、組織運用に必要な機能が揃います。
エンタープライズ
(Enterprise)
約860円
※最低5ユーザーから
最上位プラン。シングルサインオン(SSO)、Active Directory/LDAP連携、SIEM連携、外部IDaaS(Okta、OneLoginなど)との統合といった、大規模組織向けの機能が加わります。

ここで重要なのは、価格差そのものよりも「機能の壁がどこにあるか」です。特に、企業のIT部門が最も価値を感じるActive Directory連携やSSOはエンタープライズプランの機能であり、この点が実質的なプラン選択の分岐点になることが多くあります。

1無料プランの位置づけ

あくまで個人利用のためのものです。「まず自分で触ってみる」用途には最適ですが、業務での共有・統制には使えません。会社として導入する場合は有料プランが前提になります。

2スタンダードの位置づけ

非常に安価にチーム共有を始められます。ただし監査やポリシー強制といった統制機能は限定的なため、セキュリティ要件が明確な企業では物足りなくなる場合があります。

3プロフェッショナルの位置づけ

多くの企業にとっての「標準解」です。権限管理・ポリシー・監査という統制の三点セットが揃い、ISMSやPマークの要求にも対応しやすくなります。

4エンタープライズの位置づけ

既存のAD/IdP基盤と統合したい組織向け。ユーザー管理の自動化とSIEM連携により、運用負荷を大きく下げられます。従業員数が多いほど投資効果が出ます。

2. 機能比較表

主要な機能がどのプランから利用できるかを整理しました。実際の提供範囲は変更される可能性があるため、最終確認は公式の比較ページで行ってください。

機能 無料 スタンダード プロフェッショナル エンタープライズ
パスワードの保管・管理
ブラウザ拡張による自動入力
パスワード自動生成
モバイルアプリ
多要素認証(MFA)
ユーザー・グループへの共有
権限レベルの指定(参照のみ/自動入力のみ等)
フォルダ(チャンバー)単位の共有
パスワードポリシーの強制
監査ログ・監査レポート
漏えいパスワードの検知
緊急アクセス
クラウドアプリへのSSO
Active Directory/LDAP連携
外部IdP連携(Okta/OneLogin等)
SIEM製品との連携
ヘルプデスク製品との統合
表の読み方

この表は「どのプランから使えるか」の目安を示すものです。同じ機能名でも、プランによって設定できる範囲や細かさが異なる場合があります。また、機能の提供区分は見直されることがあるため、導入判断の根拠にする場合は必ず公式のプラン比較資料と照合してください。特に「この機能がないと導入できない」という必須要件がある場合は、トライアル期間中に実機で動作確認することを強くおすすめします。

3. 自社に合うプランの選び方

プラン選定は、「安いものから始めて必要になったら上げる」という考え方と、「最初から必要な機能が揃ったものを選ぶ」という考え方があります。パスワード管理の場合、後者を推奨します。理由は、途中でプランを上げると運用ルールの作り直しが発生し、その手間が価格差を上回ることが多いからです。

判断のための質問

質問「はい」の場合に必要なプラン
複数人でパスワードを共有したいスタンダード以上
誰がいつアクセスしたかの記録を残したいプロフェッショナル以上
ISMS・Pマーク・J-SOXなどの監査対応が必要プロフェッショナル以上
組織としてパスワードの強度基準を強制したいプロフェッショナル以上
担当者不在時の緊急アクセス手段を用意したいプロフェッショナル以上
Active DirectoryやLDAPと連携したいエンタープライズ
クラウドサービスへのSSOを実現したいエンタープライズ
Okta・OneLoginなど既存のIdPと統合したいエンタープライズ
SIEMにログを集約してSOCで監視したいエンタープライズ

規模別のおすすめ

S〜10名の小規模

スタンダードで共有を始め、監査要件が出てきた段階でプロフェッショナルへ。ADを運用していない組織が多く、エンタープライズの必要性は低い傾向です。

M10〜100名

プロフェッショナルが基本線。ADを運用しており、入退社の手続き負荷が課題になっているならエンタープライズを検討する価値があります。

L100名以上

エンタープライズを推奨。人数が増えるほど手作業でのユーザー管理は破綻します。AD連携による自動化の効果が価格差を上回ります。

R規制業種

金融・医療・官公庁関連など監査要件の厳しい業種では、監査ログとSIEM連携が実質必須となるため、エンタープライズが前提になります。

4. 費用シミュレーション

参考価格をもとに、年間費用の目安を試算しました。あくまで概算であり、実際の請求額は契約条件により異なります。

利用人数 スタンダード
(年額目安)
プロフェッショナル
(年額目安)
エンタープライズ
(年額目安)
10名約 12,960円約 64,800円約 103,200円
30名約 38,880円約 194,400円約 309,600円
50名約 64,800円約 324,000円約 516,000円
100名約 129,600円約 648,000円約 1,032,000円
300名約 388,800円約 1,944,000円約 3,096,000円

※ 参考価格(スタンダード108円/プロフェッショナル540円/エンタープライズ860円、いずれも1ユーザー月額・年間契約時)× 人数 × 12か月で単純計算した概算です。税は含みません。

費用対効果をどう考えるか

「1人あたり月額860円」という数字だけを見ると高く感じるかもしれません。しかし、比較すべきは導入しなかった場合に発生しているコストです。

  • パスワード忘れの問い合わせ対応:1件15分、月20件なら年間60時間。人件費に換算すれば数十万円規模になります。
  • 入退社・異動時のアカウント処理:1人あたり30分かかっていた作業が、AD連携で実質ゼロになります。年間50人の入退社があれば25時間の削減です。
  • 権限棚卸しの作業:Excel管理表と各システムの突き合わせに、半期ごとに数日を費やしている組織は珍しくありません。
  • 監査対応の資料作成:証跡が自動で残っていれば、審査準備の工数を大きく減らせます。
  • そして最大の項目:情報漏えい1件のコスト:調査費用、通知・お詫び対応、システム改修、取引停止、信用の失墜。中小企業でも数百万円から、規模によっては数億円に達します。
100名の企業で年間約103万円をどう見るか

これは、情報漏えい事故が起きたときの初動調査費用にも満たない金額であることが多い水準です。パスワード管理ツールは「便利ツール」ではなく「保険と業務効率化を兼ねた投資」として評価するのが妥当です。稟議を通す際も、削減される作業時間を定量化して提示すると説得力が増します。

5. 契約時に見落としやすい注意点

① 最低ユーザー数の設定

プロフェッショナルおよびエンタープライズには、最低5ユーザーからという条件があります。3名で使いたい場合でも5ユーザー分の費用が発生する点に注意してください。小規模チームでは、この最低条件が実質的な最低料金となります。

② 年間契約と月間契約の差

本ページの参考価格はいずれも年間契約時のものです。月ごとに支払う契約にすると、1ユーザーあたりの単価は高くなるのが一般的です。長期利用が見込めるなら年間契約のほうが有利ですが、まずは試したいという場合は月間契約から始め、定着後に年間契約へ切り替えるという進め方もあります。

③ ユーザー数の数え方

課金対象は「Vaultにアカウントを持つユーザー数」です。ここで注意したいのが、AD連携で同期対象の範囲を広く取りすぎると、想定以上のユーザーが作成されてしまうことです。退職者アカウント、システム用アカウント、テスト用アカウントなどが混入していないか、同期設定時に必ず確認してください(AD連携の注意点はこちら)。

④ 税・為替の扱い

掲載価格は税別であることが一般的です。また、Zohoはグローバル企業であるため、契約形態によっては為替の影響を受ける場合があります。年度予算を組む際は、多少の変動を見込んでおくと安全です。

⑤ 導入支援・サポートの範囲

プランによって受けられるサポートの範囲や応答時間が異なる場合があります。AD連携やSSOの設定を自社だけで進めるのが不安な場合は、パートナー企業による導入支援サービスの利用も検討してください。その場合、ライセンス費用とは別に導入支援費用が発生します。

⑥ 他のZoho製品との組み合わせ

Zohoは多数の業務アプリケーションを提供しており、複数製品をまとめて利用できるパッケージ(Zoho Oneなど)も存在します。Zoho製品を他にも導入している、あるいは今後導入予定がある場合は、単体契約とパッケージ契約のどちらが有利かを比較検討する価値があります。

見積もり取得時に確認すべきこと
  • 希望する機能(特にAD連携・SSO・SIEM連携)が対象プランに確実に含まれているか
  • 最低ユーザー数と、途中でユーザーを増減した場合の精算方法
  • 年間契約の場合の中途解約の可否と条件
  • データの保存リージョンを選択できるか
  • サポートの提供言語・提供時間帯
  • 契約終了時のデータエクスポート方法と、エクスポート可能な形式

6. 無料トライアルの活用

Zoho Vaultには有料プランの無料試用期間が用意されています。カタログの機能一覧を眺めるより、実際に触ってみるほうがはるかに確実な判断ができます。トライアル期間中に必ず確認しておきたいポイントを挙げます。

  1. 自社が使っているサービスで自動入力が動くか

    特殊なログイン画面(多段階入力、独自のフレーム構造など)を持つ社内システムでは、自動入力がうまく働かないことがあります。業務で最も使う上位10サービスで必ず検証してください。ここが動かないと、利用者は使ってくれません。

  2. 既存データを問題なく取り込めるか

    現在のExcel管理表やブラウザ保存のパスワードをインポートし、文字化けや項目の欠落が起きないかを確認します。移行できるかどうかは、導入工数を大きく左右します。

  3. 権限設計が自社の組織構造に合うか

    実際に部署を模したグループを作り、想定どおりの見え方になるかを試します。「この部署からは見えてはいけない」という要件が満たせるかを、必ず別アカウントで実際に確認してください。

  4. AD連携の疎通が取れるか(エンタープライズ検討時)

    テスト用のOUを1つ用意し、数名だけで同期を試します。ネットワーク要件(プロキシ、ファイアウォール)で詰まることがあるため、この確認は早い段階で行うのが得策です。

  5. ITに詳しくない社員が使えるか

    これが最も重要な検証項目です。情報システム部門だけでなく、現場の一般社員数名に実際に使ってもらい、つまずいた箇所をメモしてください。そこがそのまま、展開時のマニュアルに書くべき内容になります。

トライアルは「機能確認」より「運用確認」

機能があるかどうかはカタログで分かります。トライアルで本当に確かめるべきは、自社の業務の流れに無理なく組み込めるかです。使いにくいと感じられたツールは、必ず抜け道(結局Excelに戻る、パスワードを個人メモに控える)を生み、セキュリティは元の木阿弥になります。